ハイパフォーマンス ブラウザネットワーキング ―ネットワークアプリケーションのためのパフォーマンス最適化 Ilya Grigorik,和田 祐一郎,株式会社プログラミングシステム社 オライリージャパン 売り上げランキング : 94924 Amazonで詳しく見る by AZlink |
なぜ輪講形式にしたか
本の内容は、光ファイバーや無線の規格といった下のレイヤからHTTP2やWeb RTCの上のレイヤまでカバーしている。その範囲からして、アプリケーションエンジニアだけでやるよりも、インフラの人に解説してもらった方が面白いのでは、と思ったから。例えばTLSの章に出てくる証明書チェーンの最適化のくだり、インフラとアプリで分業が進んでいるとアプリエンジニアは運営しているサービスの証明書チェーンがどうなっているかなんて意識していないだろう。TCP最適化の所には「サーバーは最新のカーネル使え」とあるがフロントのエンジニアにはどうしようも無い。本に載っているテクニックが採用可能かといった議論するには各分野に詳しい人がいた方が良い。
モバイルアプリ開発者が読んで得られる事
今の時点で書ける所を。特に5章から8章はモバイルアプリ開発者には面白いはず。TCPやUDPは他にいくらでも本はあるが、アプリ開発者向けに無線技術、モバイルネットワークの解説があるのは本書ならでは。例えば自分の場合
- 移動していれば接続基地局は切り変わるはずだが、TCPのレイヤで見るとサーバーと繋がったままに見えるのはなぜか
- モバイルアプリでもGeoIPで良い感じに端末のいる都市が取れるのはなぜか
- 位置情報を送り続けるアプリを適当に実装すると、あっという間にバッテリーを食いつくすのはなぜか
といった前からの疑問が解決した。バッテリーを無駄に消費しないためには、実際にどう実装すれば良いのかという知見と失敗例は参考になる。
あと、WebRTCに入門してみると必ず出てきて、ネットワーク初心者に混乱をもたらすSTUNやTURNなる謎のワードも前半のNATの章に解説がある。XMLHttpRequest等のブラウザに特化した話は後半になるまで出てこないが、いきなり後半をやるよりも最初から目を通していくのが良いと感じた。
普段なにげなく使ってはいるが中身の動作は知らなかった、という部分がどんどん埋められていく感覚が気持ちいい。
まとめ
カバーしている範囲が広いだけに、アプリ、セキュリティ、インフラ各々得意な分野が異なる人で集まって議論すると面白い。後半もがんばるぞいという事で、参加者の皆様もいつもありがとうございます。