2019-03-16

オペレーションズ・リサーチ学会の研究発表会に行ってきた

近くで開催していたので聴講に。
何故このタイミングでORの学会かと言えば、広告配信サービスの現場でエンジニアやってると因果推論も機械学習も組合せ最適化もやらなきゃいけない状態で。最近だと特に最適化に時間を多く使っているのでリサーチの動向を見たくて参加してきた。ちなみにORの事は良く知らないので滅茶苦茶な事を書いているかもしれない。

全体の感想

招待公演はどれも興味深く、製造・インフラ・輸送業と共に進歩してきたORの歴史の厚みを感じた。カーマーカー法が発表されてから主双対内点法へ至る話や演算子オーバーロード方式の自動微分が最適化ソフトウェアに与えたインパクトといった自分でも知ってる様な伝説級のエピソードについて当事者から聴けたのはわくわくしたし貴重な体験だった。

一方で会場の人の少なさは引っかかったし、学会の会員数は減り続けているとの事。JSAIの全国大会や同日開催だったNLP(言語処理学会)と比較すると勢いの無さは否めないだろう。ORは現実のモノ・ヒトを効率良く動かし配置する事を目指す学問であるため、国の衰退・製造業の衰退の影響をもろに受けているのかなと想像した。同時に「インフラの間引き計画」や「需要が減り続ける設定においてパフォーマンスが良い配置計画」は衰退と上手く付きあう研究なので価値があるなと。

自分の周りだと「機械学習案件の皮を被ったOR案件」という言葉があり、必要なのは機械学習じゃなくて待ち行列理論による最適化だったという話も聞く。企業のデータ活用が進む段階、データ分析基盤とBIツールが入ってさて次に何ができるか、というタイミングで流行りの機械学習に飛びついたのだと予想できるが、最適化は今後も実務で必要。機械学習で何かを予測してそれで終りという事は少なく、後続にシステムの自動最適化が待っているのが殆どだろう。なので研究者は減るが実務者はそこそこ増えるんじゃないかと思っている。

面白かった発表いくつか

閲覧数列の順序関係を考慮した商品選択確率の推定
ネットサービスにおけるユーザーの閲覧履歴 (リーセンシーとフリクエンシー) のみによる予測。広告でも機械学習で予測しようにも素性が殆どないケースはあるので閲覧履歴を表現力のある状態で使うのは上手いと思った。他の学習モデルとStackingすると強そう。ECサイトTmallのデータが公開されていて実験に使えるのは知らなかった、便利。

非羨望性を考慮した被覆制約付き複数財市場の価格決定
複数財オークション。広告の広告表示権利の取引にも使えるプロトコルの提案で売り手の利得を最大化する。広告表示権利のオークションだと、オークショナーは売り手(パブリッシャ)の味方なのでアリだと思う。
非羨望性にピンとこなかったので質問したら昔からある制約との事。複数財オークションの事は全然調べた事がなかったので勉強になった。

このエントリーをはてなブックマークに追加