2020-03-01

ウィルス感染検査とFalse-Positive Paradox

最近のニュースでウィルス感染症の検査と聞いてまっさきに思い浮かんだのが、母集団の感染率より検査の偽陽性確率が高い時に人間の直感から離れた結果になるパラドックスの話。統計学の教科書にも練習問題として出てくる印象があります。

問題

ウィルス感染検査で陽性となった時に被験者が感染している確率を求めよ。

母集団の感染率は0.1%。検査の性能は感度99%・特異度99%、つまり感染している人は99%の確率で陽性となり、感染していない人は99%の確率で陰性となるものとする。

計算

  • 感染しているか否かを y ∈ {0, 1}
  • 検査結果を x ∈ {0, 1} で陽性が1とする
ベイズの定理
 より、検査結果が陽性だった時に感染している確率は
ここで
  • P[y = 1] = 0.001
    • 感染率
  • P[x = 1|y = 1] = 0.99
    • 感度
  • P[x = 1} = 0.001 * 0.99 + (1 - 0.99)(1 - 0.001)
    • 真陽性率 + 偽陽性率
であるから、検査で陽性が出た時に感染している確率 P[y = 1 | x = 1] = 9% となる。

メモ

元々の発生確率が低い場合、人間の直感に反して検査精度よりも小さな値となるため検査結果の解釈は慎重を要する。これは1%の偽陽性によって陽性判定数が増えるからである。健康診断で「要精密検査」という結果が出たが、精密検査の結果何も異常が見つからないケースが同じ。だれもが偽陽性を考慮して結果の解釈ができるわけではないので、例の様な状況において手当たり次第検査を受けさせると混乱が広がる事も想像できる。

文献[1]はFalse-Positive Paradoxにより自動判定を共なうテロリスト検出システムは無実の人々を分析するのに費やされるコストが増える事を指摘している。文献[2]には近い例がいくつか載っている。

おかしな所があったら教えてください。

参考文献

[1] Parra-Arnau, Javier, and Claude Castelluccia. "Dataveillance and the False-Positive Paradox." (2018). https://pdfs.semanticscholar.org/00af/50c635aeebd651d52c5c5e9633201988ee8f.pdf

[2] Wikipedia contributors. (2020, February 17). Base rate fallacy. In Wikipedia, The Free Encyclopedia. Retrieved 02:33, March 1, 2020, from https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Base_rate_fallacy&oldid=941255359

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